株式会社鈴木商会
代表取締役社長
鈴木 一正 さん
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建築家としてあるべき姿とは

今回の対談のお相手は、10年以上にわたり佐竹永太郎をパートナーとして、
ホテルやスキー場などのリゾート施設の経営を手掛けてきた鈴木一正さんです。
対談を通じて佐竹とともに施設の再生にどのように取り組んできたかを振り返っていきます。

鈴木社長とは、広島・安芸グランドホテルの案件をいただいた2002年頃からのお付き合いになりますか。

うちの会社が安芸グランドの譲渡を受けたのが2002年の11月だから、確かにその頃からですね。

もう14年ですか…

それ以来佐竹さんには、指宿、白浜、串本、白樺湖、奥利根、そして今は函館と、安芸グランド以外にもうちの施設についていろいろお願いしています。佐竹さんは「問題の解決策を具体的に形に落とし込める人」だから。

そう言っていただけるとは、恐縮です。

うちの会社の柱の事業は、いわゆる業績が芳しくないような施設を取得し、再生させて運営することですから。「問題の解決」からは逃げられません。

安芸グランドではまずエントランスのリニューアルからはじめましたね。「入り口の重たい雰囲気を変えましょう」と。

それから館内、客室をリニューアルして収益を改善したのち、新しく温泉の露天風呂をつくるというふうに投資を重ねることができました。

僕はクライアントとは長くお付き合いすることが当然だと思いますが、まさに典型的な事例です。

そして今は5階の客室リニューアルを進めてもらっています。

露天風呂をつくったのは思い入れがあるんです。安芸グランドの立地は、世界遺産・厳島神社を望める観光施設にとって抜群のロケーションです。かねてからそれを売りものにしない手はないなと思っていましたから。そんな思いから、厳島神社が海越しに見える露天風呂をつくりホテルの新しい「売りもの」とすることを考えつきました。当時、施設のリニューアルの効果が現れてホテルの業績もよくなってきた頃でした。ホテルの顧客ターゲットを団体客から、より客単価の高い個人客に変えて、さらに収益の向上を図ろうということを考えている段階でもありました。そのための仕掛けとして、世界遺産の見える露天風呂をつくったのです。

そう、佐竹さんは優れた経営感覚をもった建築家なんです。単なる作品をつくるのではなく、収益を上げて商品としても活躍する作品をつくってくれる。

収益があがるものをつくるということは、お客さんが喜んでくれるものをつくるということですから。時間と手間と費用をかけて、施設をよりよい業績にする。この積み重ねに時間をかけることによって、「やった分だけ利益率を上げて、再投資」のサイクルができます。

事実、安芸グランドはずっと売上高が伸びているんですよ! 収益も上がっています。この16年を振り返ったら、建物って成長するんだなぁと実感しますね。安芸グランドの歴史を積み重ねているということも。

うちの会社が保有する施設は、ホテルや旅館という宿泊施設からスキー場、水族館まであって、簿価にするとびっくりするくらい大きな金額になります。それらを維持管理して、さらにグレードアップし続けないといけない。これはちょっと考えたらとても大変なことです。

鈴木社長から案件を受けた当時、僕は独立したばかりで「建築家としてどうあるべきか」という問いを抱えていました。「形をデザインすることが建築家なのか」とか。でもいただいた案件と向き合うなかで、建築家は、クライアントが抱える問題・課題を解決することができる立場にあるんだということに気づかされました。

佐竹さんはこっちの希望をよく聞いてくれて、予算や期間なんかも範囲内に納めてくれるし、もちろんセンスのよさも十分実感しています。そう、センスの有無はとても重要です。

でもそれだけじゃなくこっちが「もういいよ、そこまでやらなくても」って言ってもあきらめず、考え抜く人なんですよ。

腹落ちって重要ですよね。ほんとうにそれで良いのか。絶対の正解がない中でデザインを決めていくということは、多くのことを考えて、その中から一つを選択することですから、慎重になります。

うちの会社が持っている施設は、どれも観光と密接にかかわるものです。観光施設が成功するかどうかは、もちろんサービスの充実なんかも必要ですが、建物の出来次第というところが大きいです。

やるからには、課題を解決する機能だけでなく、お客さんの心地よさも追求したいと思うんです。やった結果が売上や収益という数字にも表れるし、ウェブ上で顧客の評価を知ることもできる。数字や評価を通じて、自分がやったことが検証できますよね。それが次へのモチベーションにもなっています。

話が大きくなりますが、日本の観光産業の伸びしろは他の先進国と比べると非常に大きく今後GDPの1割を担うまでになる、実に将来展望の明るい産業だと感じています。この頃は海外観光客も増え、今後も増えるという予測が立てられています。

私と佐竹さんがやっている施設の再生事業は、そんな観光産業のなかで「誰が何をやったか」という結果が残り、評価される、そんなものづくりといえるでしょう。このものづくりは、会話を重ねた時間の長さによって、お互いの信頼関係を熟成させてくれるんです。

信頼関係も積み重ね、ですね。

もっとシンプルに言うと、佐竹さんと一緒なら納得のいく結果が出る。だから楽しい。そして「もっとやろう」。そんな気持ちにさせられるんですよね。今もその真っただ中にいます。これからもよろしくお願いします。

今日はありがとうございました。